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先生にお話を伺いました。

手術の前にはBEATでウォーミングアップするのが日課。 欧米に比べ少ないバイパス症例数でも確実に結果を出す
冠動脈バイパス手術を患者さんに行う際には、その前に必ずBEATでウォーミングアップをします。
朴:先生は普段BEATを個人的に購入されておりますが、普段、どのようにご活用いただいていますか?
徳永:私は学生の頃、バスケットボールをやっていました。小学生の時は野球ですね。必ず試合の前にウォーミングアップしますよね?バスケットだったらシューティング、野球だったらキャッチボールといった具合に。BEATでのトレーニングも全く同じ感覚なんです。冠動脈バイパス手術を患者さんに行う際には、その前に必ずBEATでウォーミングアップをします。十分に手を動かしてから、実際の手術に入るんですね。これを日課にしていました。
朴:BEATでのトレーニングを日課にされているということが、手術の前には“必ず”BEATでウォーミングアップされるということでしょうか?
徳永:そうですね。手術の前は必ずやりますね。大体、手術の「前日」と「当日の朝」ですね。めています。
症例に合わせたセッティングでしっかりと本番をシミュレートします。
朴:毎回のトレーニングではどの程度練習されるんでしょうか?
徳永:手術の難度によって異なってきますね。基本的な左冠動脈前下行枝(LAD)だったら、LADのセッティングにしてトレーニングします。LADと回旋枝(Cx)が対象であれば、Cxのセッティングも含めてトレーニングすることにしていますね。症例によっては、バイパスする箇所と本数が異なりますから、しっかりと本番をシミュレートするようにしています。

「当たり前に結果を出すことができる」ということが、トレーニング効果を証明出来ているんじゃないかな、と思いますね。
朴:熟練した先生にここまでご活用いただけるとは開発者冥利につきますね。ちなみに、「トレーニング効果」はどうでしょうか?特にウォーミングアップの効果についてお聞かせください。
徳永:そうですね。トレーニング効果というか、実際に臨床で全く問題がなかったので、それが何よりかなと。自分にとって「当たり前に結果を出すことができる」ということが、トレーニング効果を証明出来ているんじゃないかな、と思いますね。

BEATでトレーニングするときに、このルーペの違いに対しても事前のウォーミングアップで体をアジャストさせたりしています。
朴:先生のご施設についてお伺いいたします。年間の手術数はどの程度でしょうか?
徳永:直近だと年間約90症例の開心術がありますね。バイパス手術だと1/4位でしょうか。今年に入ってからは4割程度と増加傾向にあります。大体20−30症例程度でしょうか。
朴:なるほど。確かに大部分がバイパス症例ではない、ということになりますね。先生のおっしゃるように技量維持のためのトレーニング、ウォーミングアップが重要であるということが私も理解できました。
徳永:単独バイパスという症例は少なく、複合的な症例が多いんですよね。私ども心臓外科医は手術時に拡大鏡(ルーペ)を使うんですけれども、私の場合、バイパス単独症例ですと3.5倍のルーペを使います。しかし、複合的な症例ですと4.5倍を使用するんですね。これは見え方も随分違います。BEATでトレーニングするときに、このルーペの違いに対しても事前のウォーミングアップで体をアジャストさせたりしています。それはすごく役に立るシミュレーションですね。
今の若い先生たちが、私たちの世代を手術することになるんです。
朴:2015年5月から新専門医制度においては30時間のOff-the-job training (WETLAB, DRYLAB等)が義務付けられました。今、技術を研鑽している若手世代に対してメッセージがあれば、お願いします。
徳永:アメリカと違って日本の心臓外科医が置かれている環境では、アメリカのように圧倒的症例数を経験しながら技術を磨いていく、ということができません。日本の場合は、十分な手術症例数が確保されている訳でもありません。そこで、昔は「ぶどうの皮」を縫ったりすることで基本的技術を磨くような努力をしていました。今は、BEATという良いシミュレータがあるので、どんどん練習すればいいと思います。特に、拍動した状態(on-beating)で練習すれば、若い人はどんどんうまくなる。特に、最近はOff-punoを第一選択にしている施設も増えているので、on-beatingのトレーニングは必須ではないでしょうか?
最初の手術はやはり手が震えたりすると思います。けれどもBEATで場数を踏んでおけば、それだけ自信にもつながりますし、それは患者さんにとっても嬉しいことですよね。是非、日課としてのトレーニングをお勧めしますね。
朴:先生の手術に対する熱い想いを理解することができました。最後に是非、世界中の若手外科医にエールをお願いします。
徳永:私たちが研修医になったときに一生懸命教えてくれた上の先生たちは、今ではもう80歳を超えました。お世話になった先生たちの治療に直に当たることもあるんですよね。それと同じことが、30年後起こるんですよね。今の若い先生たちが、私たちの世代を手術することになるんです。是非、たくさんトレーニングを積んで良い外科医になって欲しいと思います。やがて、私たちの世代をしっかり助けてください。

徳永 滋彦先生
神奈川県立循環器呼吸器病センター 心臓血管外科部長